こんにちは。ココです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)で自閉症スペクトラムな息子の行動と会話から何かのヒントを綴っていく当ブログへようこそ。
今日は数年前に書店を賑わせた本「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」から考えたこと。
AI が仕事を奪っていく
これは以前からまるで世界崩壊の伝説のように言われていたこと…。
崩壊はしませんが、AI の技術が進んでいくと今の仕事の半分以上が、人間からAI へ代替えされることはほぼ確実となってきましたね。
これから10~20年後にはなくなると言われている職業の多くはホワイトカラーと呼ばれる事務系の仕事。
保険業者、データ入力作業員、PCを使った加工や分析の仕事、図書館司書補助、銀行員窓口などがこれに当たります。
オックスフォード大学の研究チームは、702種に分類したアメリカの職業の約半数が消滅し、全雇用者の47%が職を失う恐れがあると予測しています。日本でも近い将来、働く人々の約半数が、少なくとも今の仕事を失ってしまう危機に晒されるということなのです。
50%のホワイトカラーが20年、いやもっと短い期間で減るというのは、途轍もないことです。
引用元:「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子・著
素早い計算力や分析力を強化している日本の学校教育ですが。計算も分析も、AIが最も得意とする分野。赤子の手をひねるようなものです。
AI にできない仕事って?
Siri やグーグル、ワトソンは、何でも答えてくれます。
今いる場所から駅への所要時間、ご飯の残りでパンを焼く方法、これから行くレストランの混みあう時間帯…。
「なにか冗談を言って?」と言えば「旅の出発地にピッタリな島があるのを知っていますか?どこかって?イースター島です。いいスタート、だから」なんて笑いまでつけて答えてくれます。
ですがAI は感情があって答えているわけではありません。
AI にとって私達の「言葉」は「意味があって理解している」わけではなく、こうきたらこう、というような膨大なデータの中から統計と確立を使って、一番的確な答えを出しているだけなのです。
AI の弱点は応用が利かないこと、柔軟性がないこと、「意味を理解しないとわからない」ものへの対応などです。
オックスフォード大学の研究チームの予測として、今後10~20年後にも残る仕事として挙げられたのは、小学校教師、消防・防災の第一線監督者、歯科医、臨床心理士、栄養士など。
コミュニケーション能力や理解力、柔軟な対応を求められるものが多いですね。
人はマニュアル通りにはいきません。話しかけた方がいいのか、この場合はそっとしておいた方がいいのか。一緒にお茶を飲んで愚痴を聞いてあげたらラクになれそうなのか、遠くから見守るだけに徹するのが良さそうなのか、などを判断する。それこそ「人間らしい」柔軟な対応は、人間にしかできませんよね。
3人に1人が簡単な文章を読めない
それではここで実際に調査した問題文を見てみましょう。
次の文を読みなさい。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う
①デンプン ②アミラーゼ ③グルコース ④酵素
*******************************
某新聞社の論説委員から経産省の官僚まで、なぜかグルコースを選ぶので驚きましたが、正解は①のデンプンです。
引用元:「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子・著
いかがでしたか?子供に限らず、今の日本の大人でさえも基礎読解力が身についていない方が非常に多いという結果になったそうですが。
正解に辿り着けたでしょうか。
読書の好き嫌いと基礎読解力には相関がない
我が家のかんしゃく息子は、読書が趣味のひとつでもあります。
ゲームができる時間を制限されているので、それ以外の暇なときは本を読んでいます。
読書好きは幼少の時からで、漢字や文法はそれなりに勉強しないと難しいですが、それ以外は国語の勉強をしていなくても好結果を出していたので、読書の習慣が国語力を上げる、という話を信じていました。
母の恩師である国語の先生が「子供には本をたくさん読んであげなさいね。そうすると大きくなってから国語だけは、勉強しなくてもよくなるから」という指導もあり、両親は本だけはたくさん用意してくれました。
そして確かに、私は国語だけは勉強しなくてもよい教科になっていました。読解力だけは特別成績が良かったんですね。
が。データを分析してみたところ、通塾の有無、読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間と基礎読解力には相関がない、という筆者も驚き、ショックを受けた結果が出たのです。
私も「えーっ…」と思わず声に出してしまいましたね…。
読書量が読解力を上げる基礎だと思っていたけど、全然関係なかったんだ…。
塾で教わる「こうきたらここを抜き出せ!」的なテクニックも、読解力は引っ張り上げられない、ってことだね。じゃあ何が効果あるんだろう?
読解力を養うのに有効な勉強法や習慣は、残念ながら今のところ解明されていないそうです。
多読よりも精読にヒントがある?
それでも筆者の考えにとても共感した部分がありました。
ところで、私自身の話で恐縮ですが、読書は苦手な方です。大学時代から、多くても年間5冊くらいしか本は読めません。
活字を読むのは好きなのですが、そんなに早く読めないのです。
でも、自分でない赤の他人が何年もかけて書いた本を理解するためには、著者が書くのに要した時間の倍はかかって当たり前だと思いませんか?
もしかすると、多読ではなくて、精読、深読に何らかのヒントがあるかも。そんな予感めいたものを感じています。
引用元:「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子・著
できるなら、本を読むときはじっくりと時間をかけて。その「読んでいる時間そのもの」がストレスを緩和する「セラピー」の効果も持つのですから。
私も遅読です。図書館から借りてきた本も、2週間ではとても読めません。
何度か借り直して、それでも読み切れない。結局同じ本を探し求め、購入してゆっくりと時間をかけて読みます。
え、この結論はどこから導いたの?と戻って読んで、ああ、ここかあ。
ん?この考えは…よく分からないなあ。例えば私だったら??なんて妄想を巡らして、んー、やっぱり賛同できないかなあ。
そんな時は数週間経ってまた読み直したり。
筆者のように活字は好きなのですが、とにかく読むスピードが遅いのです。
自分の頭と感覚と感情で深く理解できないうちは読み進められない…。
私はそれを頭の回転が悪いマイナス面として捉えていましたが、この言葉で嬉しくなりました。
そう。何年もかけて推敲を繰り返した本を読み、理解する時間は、それ以上の時間がかかるのです。
まとめ
ところで我が家のかんしゃく息子は多読。
年間300冊は余裕で超えてしまいますが、本によってはページをめくるスピードが早いなあ…と思う時もあります。
よく彼を見ていると、分かり切ったような内容のもの、恋愛が絡むような興味のない箇所は読み飛ばしているようです。多読なわけですよね。
逆に1ページをじっくり読んでまた前のページに戻ってみたり…という精読しているな、という本の内容は、普段の会話にも話題として出してきます。
時間をかけて読んだ本の内容は数年経っても色褪せないよ!
数年経って何かの時にひょい、と別の知識と繋がることもあったりして、「ああ、そーいうことだったんだ!」っていう経験は何度もある。
そんな風に得た知識は記憶に強く残るよね。そして一気に見えてた世界が広がっていったりするんだよ。
もしかしたら本を大量に読む「多読」よりも「精読」の深度こそが、「読解力」という見えない力を育むのかもしれませんね。
「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」。数年前の本ですが、とても面白い本です。興味を持たれたのなら是非。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。