こんにちは。ココです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)で自閉症スペクトラムな息子の行動と会話から何かのヒントを綴っていく当ブログへようこそ。
今日は、息子との初めての海外旅行を思い立った私の、心の葛藤についてお話したいと思います。
終わりのない、発達障害児の育児
この命がお空に帰って行く前に、もう一度あの青い海を見よう…。
そう決断した私。
しかし国内の温泉旅行と違って、海外へ行くためにはそれなりの準備が必要です。
第一、仕事が多忙な夫に、果たして海外へ行けるほどの休暇があるでしょうか?
まとまって取れる休みはゴールデンウイークや年末年始。ほぼカレンダー通りの仕事なので、第一そんな時期は最繁期で旅行代も高額です。
若かった頃に海外へ行っていた時も、仕事で休みが取れなくて、超高い年末年始に旅行へ行っていましたが、その頃は夫婦ふたりだけ。
貯金にも余裕があったんですね。
しかし今は違います。一人の子供を育て上げるのに約1千万円かかる、と換算する消費生活アドバイザーの話も耳に痛いですね。
しかも息子は発達障害児。知的障害はないので、行政サービスはほとんど受けられません。
療育も勉強も習い事も、その他その障害が少しでもラクになるように工夫するための費用は、この先も延々とかかり続けるでしょう。
そしてそれには、終わりがないのです。
生活能力に致命的な困難さがないので、公的支援は受けられません。
しかし周りが支援してあげないと、重要な要件や時間を忘れてしまう、困った時に周りに助けを求められない、自分の感情がイマイチよくわからないため、チック症や鬱を発症するまで頑張り続ける、他人とのコミュニケーションがかみ合っているようでかみ合っていない…などの特性から、社会の中で生きていくことが非常に難しい。それが「発達障害児の育児は一生」と言われる所以です。
あなた自身を「最優先事項」に
そんな余裕ある?海外なんて行ってる場合じゃないよね?
理性の半分はそう思いました。でも、癇癪を起こして暴れる息子に号泣しながら、対応するたびに思ったのです。
私が鬱になったら、全部おしまいなんだ…。
この子のこれから開けるかもしれない可能性も、潰してしまいかねない。
母親の私の心が壊れてしまったら、私だけじゃなくて、息子もパパもおばあちゃんも、みんな潰れちゃうんだ…。
発達障害児を持つママたち。優先順位を間違えてはいけません。
この子達を人の道に外れることのないよう指導し、延々と終わりのない登り坂の育児を続けていくためには、何よりも私達親の心が、健全でなければいけないのです。
目の前の子供をサポートし続けるために一番必要なことは、あなた自身を大切にすること。
この子達よりも前に、あなた自身をケアすることが、最優先事項なのです。
旅行の準備が気持ちをリセットしてくれた
かくして、私は海外旅行の準備を始めました。
初めは乗り気ではない夫でしたが(行きたくない訳ではなく、仕事の休みが取れないよ!と怒っていましたね)、日々憔悴しきっていく私を見ているうちに、「何とかするよ…」と言ってくれました。
旅行雑誌を眺める。旅行会社の見積もりを取る。パスポートの発行。外貨を買う。旅行用品を物色…。
怒涛のような毎日に、そんな仕事が入り込みます。
そんな旅行の準備をする隙間時間に脳裏をよぎるのは、空港のざわめき。飛行機の滑走路。
英語のアナウンス。透き通るような青い海…。
息子に爪を立てられて引っかかれた血の滲む腕をさすりながら、その光景を思い描く瞬間。私は一気にあの高い空へと舞い上がれるのです。
毎日、それで気持ちがリセットされました。
かんしゃくに耐える力も、頑張ろうと自分を奮い立たせる気力も、息子の寝顔にそれでも愛情を感じる余裕も。
この旅行計画が全て気持ちをまっさらにリセットさせてくれました。
頑張ろう。頑張ろう。頑張ろう…。
夜、その日の癇癪に泣きはらした目をこすりながら、嬉しそうに旅行の話をする私に、ふと夫が言いました。
「出産してからずっと、あの子と三人で、いつか熱帯魚の中を泳ぐのが夢だ、って言ってたよね。…楽しみだね」
楽しみ…。そんな言葉、何年もなかったな…。
世界で一番高いもの
高額な買い物・海外旅行。
転勤族で持ち家も持てない私達家族にとって、それは心のおうちのようなものなのかもしれません。
癒される場所は、なにもその手に所有する必要はないのです。
私は学生時代に父親を亡くしました。その死は、ある日突然でした。
不妊で10年悩んだのち、やっと妊娠した子供は、数週間後お空へと還っていってしまいました。
幼い息子と仲良く遊んでいたお友達のパパが、ある日突然亡くなった経験もありました。
目の前で事故が起き、多分もう助からないだろうという人を目にしたこともあります。その後は怖くてニュースを何ヶ月も見ることができませんでした。
命は、こんなにも儚いものだということを、嫌と言うほど味わってきました。
そんな私が、みなさんにお伝えしたいこと。
それは、その手に抱えている命の尊さとはかなさ。
この世で一番大切なのはその愛情ということ。
そして、この世で一番高いものは、ダイヤモンドでもなく、豪邸でもなく、「時間」だということ。
生前、初めての家族旅行の際に父が言っていた言葉です。
「この世界で一番高くて、だけどどんな人も決してそれ以上手に入れられないのは『時間』なんだよ。少しでもその『時間』を得るために、高いお金を払って高速道路を使ったり飛行機を使ったり、延命治療したりするのは、時間にとても価値があると皆気付いているからなんだ。だからお父さんは、親として『思い出の時間』を遺産に残したいと思う。親が子供に残せる遺産は、教育と、思い出の時間だと思うからだよ。」
父は、短い命をどこかで予想していたのかもしれません。
まとめ
どうぞ、目先のことに捕らわれないでください。
これからびっくりするほどお金がかかっていく発達障害児の親に、高額なリフレッシュは勧めない、ちゃんと足元をみて生活するように。多くの本がそうアドバイスしています。
でも私は思うのです。
その価値が変容していく現金を多額に残されるよりも、何十年経ってもこうやって心をあたためてくれる思い出を残してあげることの方が、はるかにその後の人生を素晴らしいものにしてくれるのではないか、と。
それは決して高額な無駄遣いではないと。
我が子に残す最高の遺産。それは「親の愛情」と「笑顔で溢れた思い出の時間」。
いのちの重さと儚さに過去を振り返るたび、そう思わずにはいられないのです。
次回は息子、初めての空港へ入った時のお話。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。