ほの暗い部屋の一角に小さなランプが灯る場所。
ここは悩める人間のお話を長くてかわいいお耳で聞いてあげる、うさぎちゃん先生の「人間ほんわか診療所」。
3代目うさぎちゃん先生も、この診療所を時々開けるようになってきました。
さあ、今夜もお客さんがひとりやってきましたよ。
うさぎちゃん先生~。僕ね、最近困っていることがあるんだー。
今日のお客さんは息子くんかあ。で、困っていることってなあに?
僕ね、集中力が極端にないでしょ?学校から帰って宿題やってるときも、ボケーっと前髪いじってみたり、シャープペンの芯を出したり入れたり折ったり補充したりしながら30分。
ママにハッパかけられて「あ」と思ってまた解き始めるも、トイレに行きたくなってトイレで何か読んでまた30分…。
そんなこと繰り返してばかりで、トータルの勉強時間が1時間も出来ていないんだ。これじゃあ高校受験とか無理だよね…と思っているんだけど…。
そうねえ。息子くんの特性は受験が絡んでくると難儀だよねえ。
お薬が合った子なら、お薬の手助けで集中力を一定時間維持できることもあって、受験はそれで乗り切った!って話も聞くけど。息子くんのお薬は、そこまで集中力を維持できないんだね?
うんそう。飲まないよりは全然いいけどね。薬じゃなくて、他になんか方法はないかなあ?
じゃあこのお話はどう?
うさぎちゃん先生は、積み上げていた本の中の1冊を息子くんに差し出しました。
ネット上で有名な「この壺は満杯か?」の話だ。
知っている人もいるかもしれないが、知らない人も増えているようなので、少し長いが引用しておこう。
ある大学でこんな授業があったという。
「クイズの時間だ」教授はそう言って、大きな壺を取り出し教壇に置いた。その壺に、彼は一つ一つ岩を詰めた。壺がいっぱいになるまで岩を詰めて、彼は学生に聞いた。
「この壺は満杯か?」教室中の学生が「はい」と答えた。
「本当に?」そう言いながら教授は、教壇の下からバケツいっぱいの砂利を取り出した。
そして砂利を壺の中に流し込み、壺を振りながら、岩と岩の間を砂利で埋めていく。そしてもう一度聞いた。
「この壺は満杯か?」学生は答えられない。
一人の生徒が「たぶん違うだろう」と答えた。
教授は「そうだ」と笑い、教壇の下から砂の入ったバケツを取り出した。
それを岩と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。
「この壺は満杯になったか?」
学生は声を揃えて「いや」と答えた。教授は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと水を注いだ。彼は学生に最後の質問を投げかける。
「僕が何を言いたいのかわかるだろうか?」
一人の学生が手を挙げた。
「どんなにスケジュールが厳しいときでも、最大限の努力をすれば、いつでも予定を詰め込むことは可能だということです」
「それは違う」と教授は言った。
「重要なポイントはそこではないんだよ。この例が私たちに示してくれる真実は、大きな岩を先に入れない限り、それが入る余地は、その後二度とないということなんだ」
キミたちの人生にとって「大きな岩」とは何だろう、と教授は話し始める。それは仕事であったり、志であったり、愛する人であったり、家庭であったり、自分の夢であったり…。
ここでいう「大きな岩」とは、君たちにとって一番大事なものだ。
それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君たちはそれを永遠に失うことになる。
もし君たちが小さな砂利や砂、つまり、自分にとって重要性の低いものから壺を満たしていけば、君たちの人生は重要でない「何か」に満たされたものになるだろう。
そして大きな岩、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い、その結果、それ自体を失うだろう。
自分にとっての「大きな岩は何だろう?」常にそれを問いかけてみよう。優先することを決めて、そのとおりに動く。「優先順位」がこの章のキモである。
それこそが、毎日を幸せに生きるコツだと思うからだ。
引用元:「1%の努力」 ひろゆき・著
うーん、何かすっごい説得力ある話だね。僕は優先順位がつい曖昧になってしまうから、「今やらなきゃいけない大切なこと」に割く時間が少なくなってしまうんだね。
まあ、息子くんはADHDの特性がとても強いから、そうは言ってもなかなか難しいかもしれないけど、「大きな岩」を常に意識することで「あ」と思って少し頑張れるかもしれないよね。
特性は変えられないけど、「意識すること」は常に新しく更新できるものだからね。
大きな岩かあ。僕はまだ13歳。まだ見たことのない世界が未来に広がっているんだから「大きな岩探し」をするために、まずは高校に行けるように「意識」してみようかな。うさぎちゃん先生、ためになるお話をありがとう。僕、頑張ってみるよ!
うんうん。「大きな岩」の次は「うさぎちゃん先生のお世話」が優先順位だってこと、忘れないでね!
うさぎちゃん先生の人間ほんわか診療所。今宵は終了です。
レタスの葉っぱをもらって、うさぎちゃん先生は「また明日ね。おやすみ!」と息子くんにお鼻でツンツンおやすみ挨拶をしました。
息子くんも今日は何だか「新しい自分」になったような爽快な気分で眠れそうだよ、と言ってベッドに入っていきましたよ。今夜もいい夢が見れるといいですね。
本日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。