こんにちは。ココです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)で自閉症スペクトラムな息子の行動と会話から何かのヒントを綴っていく当ブログへようこそ。
今日は、今は亡き祖父の、ちょっと不思議なお話です。
不思議なことに無関心な祖父の「怪異」
祖父は寡黙で真面目、とても常識的な人でした。
家長として率先し神事仏事を取り仕切ることはありませんでしたが、神仏をよく敬う祖母を否定もしませんでした。
今でいう「理系」の人だったので、科学的根拠が曖昧なものにどっぷり浸かる性格ではなかったようです。そのため、幽霊などはあまり信じていませんでした。
そんな祖父が一度体験した「怪異」があります。
それはある夜のことでした。
信頼をおいていた人に裏切られた
祖父は終戦後、公務の仕事に就きました。立ち上げられた当初は3人しかいない職員でしたが、皆が協力し全力を尽くして仕事をしていたそうです。
十年ほど経ったある日、祖父は一番に信頼をおいていた人から、仕事上で屈辱的な裏切りを被ったそうです。
戦争時代の教育を受けていた人でしたから、「お国のための仕事を身を粉にして頑張っていたのに、国を裏切るに値する罪をなすりつけられ」「同僚からも上からも批難され」、孤軍奮闘のどうにもならない状態に疲れ果て…。もうこのまま罪を被ってあの世へ…と思ったそうです。
どこかの知事のニュースのようですね…。
この時代に生きた人は「国を裏切る行為をした者」は「生きるべきではない」という価値観で育てられたのですから、「教育」は人が生きていく上で最重要項目なのだな、ということを痛感させられます。
そしてとうとう「今夜、あの世へいこう…」と決心した日の仕事帰り。
とぼとぼと歩いているうち、祖父は「そうだ、最後に孫(私)の住まいの灯りを見てから…」と思い立ち、当時私と父母が住んでいた近くのアパートへ向かいました。
窓から漏れる灯りを見ていると、やはりどうしても孫(私)の顔が見たくなり…。こらえきれずにチャイムを押してしまったのだそうです。
枕元に小坊主が現れる
夜に用もなく、たった一人で訪ねてくることが未だかつてなかった祖父を見て、父は何かを感じ取ったようです。
孫の相手をしている祖父にお酒をすすめ、「お義父さん、疲れたでしょう。今日は飲んで、ここに泊まっていったらいかがですか?」と声をかけました。
生真面目な祖父が「突然夜に訪問して、酒を飲んで泊まる」なんて、通常ではあり得ないことだったのに、祖父は父のすすめの通り、お酒を飲んで酔いつぶれ、その日は泊まったのだそうです。
その時の祖父は、お酒を飲みながら妙な話をし出します。
「あのなあ、枕元に小坊主が座っているんだ。毎晩、毎晩、座っているんだ。それを見たくなくて呑んでいるのに、何故か毎晩気付くんだ…」
次の日は日曜日でしたが、父は母に「お義父さん、なんか様子がおかしいけれど、何も聞かないでとにかく今日もお酒を飲ませてあげて。酔いつぶれてもいいから、どんどん飲ませて」と指示したそうです。様子がおかしい理由は絶対聞くな、と釘をさして。
熱もあり、体調も悪かったようで、祖父は2日ほど仕事を休み(これも真面目な祖父にはあり得ないことだったそうです)、そのままアパートに滞在。
孫とふれあいながらお酒を飲み、酔いつぶれ…。3日目にとうとう病院に運ばれて入院しました。
病名は何だったか忘れてしまったのですが、ストレスが原因で引き起こした病気でした。
その後のお話
その後退院すると、祖父から「小坊主」の話は聞かなくなったそうです。
「小坊主」はあの世へ行こうと思い、鬱状態になっていた祖父が見た幻影だったのか。それともそんな闇を抱えた心に反応して、祖父が引き寄せた何かだったのか。
暗く深い世界へと堕ちそうになった祖父の心をつなぎとめたのは、家族の住まいの「灯り」であり、「ふれあう手と手」であり、「黙って祖父の全ての感情を包み込む愛情」でした。
その後、私達親子は祖父母と同居。裏切られたその人とは結局どうなったのか分かりませんでしたが。
不言実行で真面目な祖父は人望が高く、のちに公務のトップへ就任し、退職まで世の中へ尽力しました。
防災の第一線で活躍した祖父は、亡くなった後になりますが、その高い災害時指揮・管理能力を認められて、天皇から叙勲を受けています。
きっとあの世で安堵し、喜んだことでしょう。
不思議なような、そうでもないような、枕元の「怪異」のお話、お楽しみいただけたでしょうか?
本日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。